Eternalえぼりゅ?しょん!!


 第01話 魔法使いの戦士

 遠い遠い昔、異世界はもともと一つの世界であった。いつの頃からか異世界は分裂し、多くの異世界が存在するようになった。
 クッキーを割ると無数の破片ができるように、それぞれの世界の大きさはさまざまであり、なかには魔法が存在する世界や、魔法が認められていない世界もある。
 そして、それぞれの世界は独立した歴史を刻み始めた。その世界の1つに、魔法否認知世界<ミズガルズ>がある。
 魔法否認知世界<ミズガルズ>は、現代社会なので魔法が認知されていない世界。
 なので空路には飛行機、海路には船舶、陸路には自動車や電車を利用し、離れた相手とは電話を使う現代社会。
 この現代社会において「私は魔法使い!」等と言ったら、世間からは白い目で見られてしまう。
 これは、そんな魔法否認知世界<ミズガルズ>を影で守る魔法使いの少年と少女の物語。
 
 
 ここは日本の何処かにある鳳市。そこで桜花神社を営んでいる、工藤家は朝食から賑やかだ。
 今日も工藤飛鳥、蒼衣ことり、蒼衣美羽の三人は、飛鳥の家で朝食を摂っていた。
 この3人は幼馴染で、家も隣同士で兄弟同然に育った仲、今でも家族ぐるみで仲がいい。 
 飛鳥は、童顔で中性的な顔立ちで、可愛い部類にはいる少年。
 ことりは、ボブヘアーに優しい雰囲気がする少女。
 美羽は、ことりの妹で髪は二つに縛ていて可愛らしい。
 美羽が美味しそうな焼き色をしている鮭を、ふっくらしたご飯と一緒にほおばり飛鳥とことりのご飯を褒めた。
 「今日もお兄ちゃんとお姉ちゃんが、作るご飯は美味しいよね」
 「ありがとう、美羽」
 「今度、美羽もお料理をしてみる? 少しぐらいは、できた方がいいよ」
 美羽が少し考え込み、悪戯っ子のように微笑んだ。
 「ボクは、消費担当だし。でも……、ボクが叔母さんになる日も近いだろうし。未来の親類の為に、お料理でもしてみようかな?」
 美羽の言葉で、飛鳥とことりは耳まで真っ赤になった。これが、美羽が飛鳥を「お兄ちゃん」と呼んでいる理由だ。
 「美羽、何言ってるんだよ」
 「別に私と飛鳥くんは……」
 その2人の様子を見て、美羽は微笑んだ。
 「2人とも、照れちゃって可愛い。ただ、『未来の親類』て言っただけなのに」
 そんなこんなで、毎朝から大賑わいの食卓なのである。
 
 飛鳥達が通う鳳学園は男女共学であり、風紀も乱れもないので評判はそれなりに良い。
 飛鳥とことりは自分達のクラス、2年1組の前に来た。美羽はまだ1年生なので、当然違うクラスだ。
 教室の前には委員長の朝霧若葉が教室に入ろうとしていた。
 若葉はつり目気味で、どこかきつい印象がある。
 「おはよう。工藤君、ことり」
 「委員長、おはよう」
 「おはようございます」 
 体育の授業になり、男子はスポーツチャンバラをやることに決まった。
 使用武器は小太刀。小太刀と防具の都合上、男子を数グループに分けて行うことになった。
 飛鳥のグループは飛鳥を含め7人。 今回のルールは生き残りであるが、協力してもよいだ。
 飛鳥は前方から向かってくる生徒の小太刀を弾き飛ばし肩を叩き、さらに背後から切りかかる生徒をかわし、振り返ると同時に腹を叩く。
 今度は四方を囲まれた。この陣形だと、切り込んだら背後から攻撃されるパターン。
 上級者あいてに、初心者数人がかりで挑めば勝てる方法だ。
 飛鳥は前方の生徒に切り込むように見せかけ、飛び込み前転で陣形を抜ける。にくいことに、抜けるさいに近くにいた生徒の太ももを叩いた。
 すぐさま踵を返し、迅速のごとく背後から迫る3人の生徒を次々に叩いた。
 飛鳥はあっという間に全員倒したのだ。
 その飛鳥の姿に、若葉は見とれていた。
 「若葉ちゃん。また、飛鳥くんをじっとみて」
 ことりの言葉で、若葉は我に返った。
 「別にそういうんじゃ。ただ、工藤君って体育会系に見えないのにすごいなて思っただけ」
 若葉は顔を真っ赤にして反論する。
 平和な学園生活。この平和に慣れてしまうので、幸せと感じないことも多い。
 それは失って初めて気がつくのだろう。
 きっと、彼女達も――。
 
 鳳公園の雑木林。 その中を牛に似た仔犬ほど大きさの動物が、おぼつかない足取りで歩いていた。
 石に躓いてしまい茂みに向かって転倒してし、茂みがゆれてしまった。
 その音で誰かが近づいてきた。
 「牛に似てるけど、何か違う気がする。新種かもよ」
 「だったら、俺達でさぁ、隠れて飼わない?」
 「それいいね!」
 近くで遊んでいた少年達のようだ。 年齢からすると、9歳くらいだろう。
 「まず、名前はどうする?」
 「牛に似ているから牛もどきはどう?」
 「なんよだそれ」
 「これっといった、名前ないじゃん」
 少年達は名前をどうするか話しつつ、牛に似た生物と遊び始めた。人になれているのか人懐っこく、すぐに仲良くなった。
 気がつくと大分周囲が茜色に染まっていた。
 ひとまず茂みに、似た生き物を潜ませた。
 
 その日の夕方。飛鳥とことりは、テレビ電話をしていた。
 相手はモデルの様な顔立ちの少年シリウス・シュトラウス。シリウスは魔導管理局正規職員であり、飛鳥とは同年齢で魔力・武道で互角の実力である。
 飛鳥達は過去にも魔法がらみの事件をいくつも解決しており、魔法がらみの事件が起きたときだけ、普通の学生から魔法を使う戦士になる。
 「飛鳥、ベヘモスの親子の保護の依頼がある。場所は鳳公園だ」
 ベヘモスは、牛に似た魔法生物である。大人の大きさは牛の大きさと変化はないが、その力は自動車を軽くペチャンコにできるほどだ。
 もしも街中で暴れだしたら一大事だ。
 「分かったよ、シリウス。僕達に任せて」
 「人に見つかる前に、保護をしてあげましょう」
 「頼んだぞ。ところで話が変わるが、美羽はどうしたんだ?」
 ことりは言いにくそうに言った。
 「居残り勉強です」
 「それは、大変だな」
 シリウスは愛想笑いをした。
 
 少年達が林から出ると、前方から牛に似た生き物が咆哮をあげ近寄ってきた。
 それは牛に似た生き物の親、保護依頼のでているベヘモスである。
 ベヘモスは少年達を睨み付け咆哮を上げると、少年達めがけ突進をしてきた。
 ベヘモスの威嚇で少年達は恐怖から動けなくなってしまった。 少年達にベヘモスが迫る。
 そのとき、淡い青色に光る魔法陣が現われ、白色をしたブレザーに似た<防御服>を着た飛鳥とことりが現われた。
 そして飛鳥は、ベヘモスの突進を受け止め呪文を唱えた。
 「結界を張らないと、“ルラン・ラルシ・レッヴライ”」
 周囲を結界が包み込む。
 これで、外部から結界の中が見えなくなり、入ってこれなくなった。
 次に飛鳥は少年達に右手を広げて向けた。
 「“ぺネセ”」
 魔法で少年達は眠りについた。
 そして、飛鳥は誰もいない砂場へ、ベヘモスが怪我をしないように投げ飛ばした。
 ベヘモスは起き上がり吼えると、飛鳥めがけて突進してきた。飛鳥は冷静に闘牛士のように、ベヘモスの突進をかわした。
 突進を回避されたベヘモスは急旋回して、飛鳥めがけて再び突進してきた。
 「“チカス・ルタシ”」
 突進してくるベヘモスの周りに無数の小さな魔法陣が現れ、そこから淡い青色の鎖が現れ意思を持つかのように動きベヘモスを縛り上げた。
 拘束され動きを封じられたベヘモスは、鎖を引きちぎろうと暴れ始めた。
 「とりあえず、これで大丈夫かな? それよりあのベヘモスは、子供が居なくなって怒ってるみたいなんだ」
 「今、探して見ますね。“タルヴェリ”」
 ことりは目を閉じ精神を集中させ、魔法で周囲を索敵しはじめた。
 魔法生物は微弱ながら魔力を放っているので、索敵魔法“タルヴェリ”で探せるのだ。
 しばらくして、ことりの目が開いた。
 「見つけました。この公園の林にいます」
 「僕は親の気を引いてるから、ことりは子供のほうをお願い」
 「任せてください」
 可愛らしくウィンクすると、ことりは子供のベヘモスの保護に向かった。
 一方の親のベヘモスは暴れ拘束していた魔法の鎖を力づくで引きちぎり、すぐさま飛鳥へ突進を仕掛けてきた。
 飛鳥は突進してきたベヘモスの背中に手をつき、跳び箱のように飛び越えた。 すると、ベヘモスはUターンして再び突進を仕掛けてきた。
 飛鳥はその場を動こうとせず呪文を唱えた。
 「もう、暴れなくていいんだよ。“チズネス・ロウジュン”」
 右手の手のひらを広げベヘモスに向けた。 飛鳥の右手の手のひらから淡い青色の光の粒子がベヘモスを包み込んだ。
 これは感情を抑制する魔法。魔道管理局でも飛鳥しか使えない貴重な魔法なのだ。
 粒子を浴びるとベヘモスは今まで怒り狂っていたのが嘘のように落ちついた。
 そして、優しくベヘモスに語りかけベヘモスの頭をそっとなでてあげた。
 「もう大丈夫だよ。もうすぐ会えるから」 
 「飛鳥くん、無事に保護できました」
 タイミングよく帰ってきたことりの腕には、ベヘモスの子供が抱きかかえられていた。
 「ありがとう、お疲れ様」
 ことりはベヘモスの近くに優しくベヘモスの子供を降ろしてあげると、ベヘモスの親子は寄り添い嬉しそうに鳴いた。
 ことりは優しい母の様な目でベヘモスの親子を見つめた。
 「もとの世界で幸せに暮してね。“ヴェントウ”」
 ベヘモスの親子はピンクの光に包まれ、異空間で現在待機中のソプラノ級次元巡洋艦<ダ・カーポ>に転送されていった。
 「帰ろうか。ことり」
 「うん」
 2人は転送魔法で工藤家に帰還した。
 2人が帰るとベヘモスが暴れていた鳳公園では、少年達は何事もなかったかのように眠りから覚めた。
 「あれ? 俺達、何をしていたんだろう」
 「仔牛に似た動物と遊んでいたような、気がするようなしないような」
 「みんなそろって、同じ夢?」
 少年達はさっきあった出来事を、夢と勘違いをしているようだ。
 可愛そうだが魔法が認知されていない世界<ミズガルズ>を、混乱させないために飛鳥達が取った手段である。少年達を魔法で一時的に眠らせているだけで、記憶を操作はしていない。
 可愛そうだが秩序を守るために、今日のことは事実上無かったことにしたのだ。
 
 宇宙の様な壮大な空間に、宝石箱をひっくり返したように色とりどりに輝く球体がいくつも見える。その球体がそれぞれの世界に通じている。
 魔法否認知世界<ミズガルズ>に通じる球体の近くに停泊中の、ソプラノ級次元巡洋艦<ダ・カーポ>の艦内に飛鳥とことりは来ていた。
 艦長席には、古風な雰囲気がする少女が座っていた。
 「ご苦労様です。飛鳥さん、ことりさん。後は私達に任せて下さい」
 艦長席に座っている黒髪の少女、イリス・アルファーノは飛鳥とことりにお礼を言った。
 イリスは先ほどのテレビ電話の相手、シリウスの上官で恋人である。
 「イリスさん、気にしないで」
 「そうですよ」
 イリスは艦長席の空中にホログラムで現れたキーボードをすばやい手つきで操ると、メインモニターに幸せそうなベヘモスの親子が映し出された。
 まだ、ベヘモスの親子はこの艦内いるが、このあともとの世界に送りとどけられる。
 ことりは飛鳥に寄り添った。
 「飛鳥くん。無事に保護できて良かったね」
 「うん。あのベヘモスの笑顔も守れたし」
 
 
 『第02話 赤マントの怪人』につづく


 
 あとがき
 読んでくれてありがとうございます。
 作品タイトルだけでも覚えてもらえると嬉しいです。
 
 美羽が飛鳥を読んでいる理由は、義理の兄の予定。
 それは美羽の実姉であることりと、飛鳥が結婚の予定。張本人たちは両想い(?)だけど、照れて進展がなく幼馴染どまり。
 飛鳥とことりの将来は……!?
 
 さておき、今回登場したベヘモス。地域により姿が異なったりします。
 ベへモスは別名で、ベヒーモス、ベヒモス等とも呼ばれてたり、食卓に出されたりとしています。
 次回は、都市伝説の赤マントが登場します。
 


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