Eternalえぼりゅ?しょん!! 第06.5話 栗鼠の伝言


 アーサー・C・クラークの言葉、『充分に発達した科学技術は、魔法と見分けが付かない』のように、魔法認知世界<ミミル>ではほかの世界の何十年も先を行く科学力、ほとんどの世界の魔法学が集まる世界。
 どれが魔法で、どれが科学力なのか区別がつかないほどだ。
 それらの力を悪用する者は当然現れる。
 魔法が認められていない世界の1つ、魔法否認知世界<ミズガルズ>に魔の手が迫る。
 魔法と科学の力を悪用し、秩序を崩そうとするものがいた。
 これは、そんな魔法否認知世界<ミズガルズ>の秩序を影で守る魔法使いの物語。


 工藤飛鳥と蒼衣ことりは図書室の書庫で本の整理をしていた。
 ことりは図書委員だが、飛鳥は保健委員。飛鳥はことりが1人じゃ大変だからと、手伝っているのだ。
 飛鳥がチラリと時計を見る。
 「そろそろ委員長も仕事がおわってるかな」
 「じゃあ、今日はこの辺にして行きましょうか」
 2人は仲良く書庫を後にした。
 飛鳥とことりは仲のよい会話が始まった。
 その会話を迷いこんだ1匹のラタトスクが盗み聞いた。
 姿が栗鼠と似ているためか、怪しまれていない。むしろ鳳学園では迷いこんだ栗鼠等もまれに目撃されるのでなおさらだ。
 飛鳥が口を開いた。
 「僕はきみが好き」
 「私も好き」
 「委員長はどうなのかな? 苦手じゃないといいんだけど」
 「そうですよね」 
 ラタトスクの習性は伝言を伝えたがること。特殊な発声器官を持っているので声まで再現してくれる。
 ここまではありがたいのだが、別の習性には難点がある。
 まれに伝えなくてもいいことまで言ったり、無い事無い事まで言ったり、あげくには喧嘩を煽ることが多い。
 そのせいでラタトスクは厄介者とされることがある。
 校舎をうろついているうちに、鳳学園2年1組の教室に残っていた朝霧若葉に目をつけた。
 ラタトスクは飛鳥とことりの声を真似た。
 「僕は君が好き」
 「私も好き」
 「工藤君、ことり……。やっぱり、2人は……」
 若葉の顔が戸惑いの色に満ちた。
 それは、若葉は飛鳥に片思い中なのである。誰だって好きな人がそんな話をしていたら不安になるであろう。
 ラタトスクは若葉の様子が面白くてたまらなくなったのか調子にのり始めた。
 「委員長は苦手だけど」
 「そうですよね」
 若葉は鞄を掴み走って教室から出て行った。もうこれ以上2人の会話を聞きたくないのだろう。
 夢中で走っていたせいで、廊下で飛鳥とことりとすれ違ったのに気が付かなかった。
 「今の委員長だよね? 走ってどこに行くんだろう」
 「急用じゃないでしょうか」
 ことりも首を傾げた。
 2人の目に若葉を追いかけるラタトスクの姿がとまった。
 「僕は委員長を追いかけるから、ことりはラタトスクを捕まえて」
 「任せてください」
 飛鳥とことりは踵を返して、若葉とラタトスクを追いかけた。

 男は困っていた。それは自動車がガス欠を起こしたからだ。
 レッカー車が到着し、牽引の準備が行われていた。
 若葉はその自動車の横を通り過ぎ横断に到着。不運なことに歩行者用は赤だ。
 「ついてないな。失恋はするし、赤信号」
 しばらく待つと、信号は青に変わった。
 若葉は歩き出した。
 「でも、まだ諦められないよ」
 さっきのガス欠の自動車のサイドブレーキが勝手に下り動き出した。
 まだ牽引されていないので、自動車は走り出し横断中の若葉にまっすぐ向かっていった。
 一方の若葉は向かってくる自動車に気が付いていない。
 自動車が淡い青色の光に包まれると、自動車のブレーキが作動した。 
 轟音とともに、ゴムの焦げた嫌な匂い鼻についた。
 あのスピードで突っ込まれては一たまりもないだろう。周りにいた誰もが絶望感を抱いた。
 運転手や周辺の人は恐る恐る視線を若葉に移すと、飛鳥に抱き留めれて反対側の車道に転がっていた。
 「委員長、大丈夫? 怪我とかしてない?」
 「工藤君……」
 公衆の面前ではあるが若葉は飛鳥の胸に顔を埋めた泣いてしまった。
 気持ちが落ち着いたのか若葉が事情を話すと、飛鳥はすんなり答えた。
 「あの、会話ね。卵の話だよ」
 「へ?」
 「黄身が好きか、白身が好きかの話だよ。あとはミルクセーキを作ろうと思ってさ。黄身を材料にするから苦手かどうか気になっちゃって」
 「あ……、そうなんだ。私の勘違いでよかった」
 若葉はラタトスクの悪戯で飛鳥とことりが付き合ってると勘違いしていたのだ。
 「勘違い?」
 「今のは忘れて、お願い」
 「うん、いいけど」
 このあと飛鳥は若葉の付き添いで病院に向かった。
 検査は無事に終了。病院の待合室では検査結果が渡された若葉と手当てをされた飛鳥が座っていた。
 「よかった。委員長に怪我がなくて」
 「ありがとう。でも、工藤君が怪我しちゃったし」
 若葉は飛鳥の手を見た。飛鳥の手にはガーゼが貼られている。
 「こんなのかすり傷だよ。すぐに治るよ」
 「ごめんね。私のせいで」
 「気にしないで。委員長が無事だっただけで僕は安心したよ」
 若葉の顔が若干赤くなった。動揺を隠すためにわざと話をそらした。
 「でも、どうして無人の車が動き出したんだろう」
 「ポルターガイストじゃなないかな。無人の車が動き出すなんて考えられないし」
 本当は飛鳥は気がついていた。あの自動車は、次元指名手配犯トゥルーデ・カール・グリムにより魔法で操作されていた。
 若葉に衝突する瞬間に飛鳥は魔法を使い、それを解除し魔法でブレーキをかけたのだ。
 飛鳥は若葉に本当のことを言わなかった。魔法の秩序の為、若葉を不安がらせないために。そうと分かっていても飛鳥は辛かった。

 その日の夜。
 「今日も工藤君に助けてもらっちゃった」
 若葉は枕元にある1年生頃の写真を見た。
 その写真は文化祭の時に飛鳥とことりと撮ったもの。この文化祭がきっかけで飛鳥に想いを寄せるようになったのだ。
 「この時も、助けてもらったよね。夢の中でも」
 若葉が夢の中と思っているのは実際にあったことだ。
 赤マントやアンサーに襲われて飛鳥に助けてもらったこと。このときは全て、魔法で眠らされていたので記憶が曖昧なのだ。
 「おやすみ、工藤君」
 若葉は電気を消し眠りについた。
 今回の事件のきっかけをつくったラタトスクはというと、ことりにより保護され今頃はソプラノ級次元巡洋艦<ダ・カーポ>で眠っていた。
 このあとラタトスクは元の世界に無事に送り届けられたのでした。


 『第07話 12時までの魔法』につづく

 あとがき
 読んでくれた人、ありがとうございます。
 今回登場した、おしゃべりな魔法生物ラタトスク。実際いたらかなり迷惑ですよね。

 さて次回は、シンデレラに登場したガラスの靴が出てきます。
 お楽しみに♪

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