Eternalえぼりゅ?しょん!! 第09.5話 幸せの綿毛


 アーサー・C・クラークの言葉、『充分に発達した科学技術は、魔法と見分けが付かない』のように、魔法認知世界<ミミル>ではほかの世界の何十年も先を行く科学力、ほとんどの世界の魔法学が集まる世界。
 どれが魔法で、どれが科学力なのか区別がつかないほどだ。
 それらの力を悪用する者は当然現れる。
 魔法が認められていない世界の1つ、魔法否認知世界<ミズガルズ>に魔の手が迫る。
 魔法と科学の力を悪用し、秩序を崩そうとするものがいた。
 これは、そんな魔法否認知世界<ミズガルズ>の秩序を影で守る魔法使いの物語。


 すがすがしい朝。こうもすがすがしいと、何かいい事がありそうなくらいだ。
 朝霧若葉は親友と待ち合わせ場所に到着した。そこには、蒼衣ことりが待っていた。
 「おはよう、ことり」
 「おはようございます」
 誰かを探すように若葉が視線を泳がす。
 「工藤君は?」
 「飛鳥くんは、委員会の仕事で先にいきましたよ」
 「そうなんだ」
 工藤飛鳥の姿がなく、どことなく表情が曇る。
 そのとき、毛玉がふわふわと舞い降りてきた。
 若葉は何かに導かれるように、ピンポン玉ほどの毛玉を手で受け取った。
 「ケサランパサランですね」
 ことりが毛玉を見て言った。
 「ケサランパサラン?」
 「ケサランパサランは、願いを叶えてくれるんですよ」
 「この毛玉がねぇ」
 若葉の手の中でゆらゆらと揺れるケサランパサラン。
 どう見ても、ただの毛玉にしか見えない。
 「ジンクスみたなものですし。何か願い事をしてみたらどうです?」
 「願い事か」
 若葉は色々と考えた。
 こう目の前に恋敵がいると、流石に『工藤君と両想いになりたい』とはいえない。
 色々と考えたあげく若葉は結論を出した。
 「童話に出てくるような王子様にあってみたいとか」
 「ロマンチックでいいとおもいますよ」
 「そうかな」
 若葉は頑固そうで恋愛に興味がなさそうだが、恋愛モノの漫画をよく読んでいる。
 このことを知っているのは親友のことりだけだ。だから、言えたことだ。
 とりあえず、ケサランパサランを筆箱に入れ、鳳学園へ向けて歩き出した。

 今日のホームルームは席替え。
 若葉はケサランパサランに心の中で願った。
 『お願いケサランパサラン。工藤君の隣になれますように』
 その結果――。
 若葉の左斜め裏に飛鳥。飛鳥の隣にはことり。
 好きな人が自分の背後とは地味に辛い。しかも、その隣は恋敵。
 「席が近くなったね。よろしく」
 飛鳥は軽く微笑んだ。その微笑みは若葉にとって、かなり甘美なものだった。

 お昼休みになり、学園中に生徒達の元気な声が響き渡る。
 若葉は珍しく自作のお弁当。かなりの自信作だ。
 『ケサランパサラン。工藤君と一緒にお弁当を食べたい』
 可愛いらしいお弁当の1つ取り出す。鞄の中には飛鳥の分のお弁当が入っている。
 「工藤君。お昼一緒に食べない?」
 飛鳥はすこし戸惑ったあげく。
 「ごめんね、委員長。今から、委員会の仕事で保健室に行かないといけないんだ」
 再び若葉の願いは叶わなかった。
 「明日は大丈夫だから。一緒に食べよう」
 「約束よ」
 若葉の迫力に飛鳥はたじろいだ。
 「う、うん」

 放課後――。
 飛鳥と帰宅しようと若葉は声をかけたが、断られてしまった。
 三度保健委員会の仕事だそうだ。しかも、帰る時間は分からないそうだ。
 ここまで飛鳥との縁がないと、呪いかと思ってしまう。
 若葉は気晴らしにことりと喫茶メルヘンによった。話に夢中になっていると、かなりの時間がたっていた。
 喫茶メルヘンからでて、帰路につくと橋の所に人だかりがでてきていた。
 2人は近づいてみると、仔犬が川で溺れれていた。岸では飼い主がうろたえていた。
 「速く助けないと」
 若葉はケサランパサランに祈った。
 『ケサランパサラン。あの仔犬を助けて』
 しかし、何も起きない。
 「やっぱり、ダメなのかな」
 その時、見なれた男子生徒が川に入っていった。
 ことりが声をあげた。
 「飛鳥くん!?」
 若葉はうつむいた顔をあげた。
 「えっ……」
 若葉が仔犬のほうを見る頃には腰まで水につかっている飛鳥が仔犬を抱きかかえていた。
 周囲から安堵の溜息が聞こえていた。

 若葉は鞄の中から筆箱を取り出し蓋を開けた。
 隣にいることりに聞こえないくらい、小さな声でケサランパサランにお礼を言った。
 「ありがとう。願いを叶えてくれて」
 すると、ケサランパサランはふわりふわりと宙を漂い、大空の彼方へ旅立っていった。
 「逃がしちゃうんですか?」
 「うん。もっと、別の人に、多くの人に幸せになってほしい。それに――」
 若葉は言うのをやめた。恥ずかしいからか、恋敵の前だからか若葉自身も分からない。
 でも心のなかではこう思った。
 『童話に出てくるような王子様にあえた』
 困っている人や動物を見過ごせない。誰にでも優しい人。 
 ことりは何となくきいてみた。
 「それに?」
 「うんうん。なんでもない。それより、工藤君のところに行こう。濡れたままじゃ可愛そうだよ」
 「そうですね」
 2人は飛鳥の所に向かった。
 腰までずぶ濡れになった飛鳥が仔犬の飼い主と別れを告げたところだった。
 「かっこよかったわよ。工藤君」
 飛鳥が振り返る。
 「これから、私の家に来ない?」
 「へっ!?」
 「そのままだと、風邪ひいちゃうでしょ。服を乾かして、その間にお風呂に入って」
 「大丈夫だよ」
 若葉はチラリとことりを見る。
 「ことりも一緒に来るから。ね、ことり」
 「私はいいですけど」
 「じゃあ、決まり」
 そういって若葉は飛鳥の手を引き、自分の家に向かった。
 ケサランパサランに勇気をもらったのか、少し大胆になった若葉。
 幸せを運ぶケサランパサランは、次は君のとこに。



 『第10話 飛鳥の母』につづく

 あとがき
 次回は、いよいよ飛鳥の母が登場。
 飛鳥が魔導管理局に入るきっかけになった事件のお話。
 お楽しみに♪

Eternalえぼりゅ?しょん!! もくじ


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