Eternalえぼりゅ?しょん!!  第12話 お菓子の家


 異世界のなかには、魔法が存在し発展してきた世界がある。
 さまざまな魔法が生まれ、世界は豊かになっていった。
 だからといって、魔法は万能ではない。物が壊れれば修理をする、病気や怪我をすれば病院に行く、失った命は戻らない。
 魔法では不可能なことを、補うように科学・医学は発達していった。
 魔法は認められず、科学が発達していった異世界<ミズガルズ>を、影で守る魔法使いの物語……。


 ここ数日鳳市の女の子達の噂の中心となっている喫茶店がある。
 まるで童話の世界に迷い込んだ気分が味わえる、不思議な喫茶店。
 噂の出所は分からず、お店の場所も分からない。
 分かっているのはお店の名前は<お菓子の家>、黄昏時にいつしか、お店が目の前に現われること。
 謎の喫茶店<お菓子の家>。その存在意義は何なのか……。
 
 日も大分傾き、鳳市全体がオレンジ色に染まる頃、今日も仲良く蒼衣美羽とフェイト・クラウスは家路についている。
 髪を短いツインテールにしている美羽がお腹をさすりながら隣を歩く。
 隣を歩くフェイトは、金髪の髪をポニーテールにしている。魔法認知世界<ミミル>からやって来たせいなのか、勘違いを起こすことがある。
 「フェイトちゃん。お腹すいたよ」
 「美羽は、よく食べるよね。私は食が細いから、うらましいよ」
 フェイトは飽きれているようだ。
 「だって、育ち盛りだもん! あれ、こんなところに喫茶店なんかあったけ?」
 たまたま通りかかった林の奥に喫茶店を発見した。
 「フェイトちゃん、<噂のお菓子の家>だったりして」
 「でも、この間はなかったけど」
 「きっと最近できたんだよ。今からあの喫茶店にレッゴー!!」
 美羽は目を輝かせながら、フェイトの手を握った。
 「でも、家に帰れば飛鳥が、おいしいご飯を作っているし」
 「お兄ちゃんが作る、ご飯は別腹だよ」
 「えっ、でも……」
 美羽はフェイトを強引にひっぱり<お菓子の家>に向かった。
 <お菓子の家>に近づくにつれ、お菓子独特のいい匂いがはっきりと分かるようになってきた。

 その頃、工藤家では食欲をそそる、カレー独特のいい匂いが漂っている。
 小柄で可愛い部類にはいりそうな少年と、ボブヘアーで優しい雰囲気がする少女が、台所に立ち料理をしている。
 少年の名前は工藤飛鳥。そして少女の名前は蒼衣ことり。
 飛鳥とことりは仲がよく、家も隣同士なせいか一緒に料理をしてご飯をたべることが多い。
 「ことり、塩とコショウをお願い」
 「はい」
 フライパンでいるドライカレーに、塩とコショウをかけ味を調える。
 「味見してもいいかな?」
 「熱いから気をつけて」
 飛鳥はスプーンでドライカレーをすくい、ことりの口元まで運ぼうとした、その時――。
 いいタイミングで工藤家に電子音が鳴り響いた。
 この音は魔導管理局からの緊急事態の知らせ。魔法否認世界で秩序が崩れようとしている。
 「ことり、続きは帰ってからみたいだ」
 「急ごう、飛鳥くん」
 飛鳥とことりは料理を中断して、出動の準備を開始した。

 美羽とフェイトが<お菓子の家>の店内に入ると、同じ年代くらいの女の子が数十人居た。
 和菓子に洋菓子。多種多様のジャンルのお菓子が取り揃えられており、見ているだけでも楽しくなる店内。
 食器や家具もお洒落で可愛く、細かいところまでこだわりが感じられる。
 和菓子少女達は思い思いのお菓子を食べ楽しんでいた。
 「フェイトちゃん。結構、混んでいるね」
 「美羽、今日は帰ろうか」
 「せっかくここまで来たんだし、食べて帰ろうよ」
 美羽の目は決意に満ちていて、美羽の耳にはフェイトの言葉は届いていなかった。
 「でも、飛鳥のご飯が……」
 「大丈夫だよ。別腹、別腹」
 美羽とフェイトが<お菓子の家>に入ると扉が嫌な音をして閉まり、扉の異音に気がついたフェイトが扉に駆け寄った。
 押しても引いても扉は動かず、まるで扉が壁のように感じられる。
 「開かない。美羽、開かないよ」
 「うそでしょ? フェイトちゃん」
 美羽とフェイトは力を合わせたが扉は開くことはなく、全ての窓も開かない。完全に閉じ込められたのである。2人のの顔に焦りの色が現われ始めた。
 この<お菓子の家>には、監禁用の強力な結界が張ってあり、内部では魔法が一切使用することが出来ない。むろん、携帯電話等の通信機器も圏外になっている。
 ここに来た全員が、完全に閉じ込められたのである。
 しばらくすると、<お菓子の家>の近くに淡い青色の魔法陣が現れた。魔法陣から白色のブレザーに似た<防御服>を着た飛鳥とことりが現れた。
 「あれが、お菓子の家ね」
 「ことり、早く中の人を助け出そう」
 「うん」
 飛鳥とことりが<お菓子の家>に近づこうとすると、目の前にトゥルーデ・カール・グリムが現れた。
 「邪魔は、させないねぇ。“チョウラン”」
 トゥルーデは手に持つ杖<イプサム>を掲げると、地面から<ゴーレム>が2体這い出してきた。
 「ここは僕に任せて。ことりは、中の人たちを」
 「飛鳥くん、気をつけてね」
 「ことりも、気をつけて」
 ことりは急いで閉じ込められた人たちの救出に向かった。

 飛鳥はゴーレムを倒すために、愛用の剣<ラクティス>をよんだ。
 「“タクト・チョウラン”」
 飛鳥は手元に剣<ラクティス>が現われた。
 剣<ラクティス>はグラディウスに似ている。しかし、剣には刃がついていない。
 そして、飛鳥は再び呪文を唱えた。
 「ストライクモード・セットアップ!!」
 この呪文によって、刃がついていなかった剣<ラクティス>に魔力の刃が現れた。
 飛鳥は飛行魔法を使い物凄い速さで2体の<ゴーレム>の横を通り過ぎた。すると、<ゴーレム>の上半身がすれ落ち機能が停止した。
 なんと飛鳥は一瞬にして、2体とも下腹部を両断したのだ。
 そして着地すると今度は、トゥルーデに向けて剣<ラクティス>をかまえた。
 トゥルーデも杖<イプサム>を構えた。トゥルーデから説明がつかないオーラが感じられる。まるで、邪悪で大きな何かがとりついているようだ。
 「“パニ・チョウヘリ”」
 この魔法は衝撃波を生み出す攻撃魔法。飛鳥は身を守るために、魔力の盾を生み出した。
 「“ヴァヴェ・サークル”」
 トゥルーデの攻撃は盾を破壊し、飛鳥の全身に衝撃が襲った。
 「ぐっわっ――」
 まるで鈍器で殴られたかのような鈍痛。<防御服>を着ていなかったら、骨折や内出血をしていただろう。
 「ダンスの時間だねぇ。“パニ・チョウヘリ”」
 さまざまな方向から衝撃波が飛鳥に襲ってきた。
 回避の場所を与えようとしていない。まるで、マラカスの中に閉じ込められているようだ。
 解放された飛鳥はトゥルーデの魔法攻撃で、かなりのダメージを受けていた。かろうじて意識があるだけで、立っているのがやっとのようだ。
 トゥルーデの攻撃により<防御服>はボロボロになり、周囲の木々は軒並み倒れている。
 「早く寝ないとねぇ。“パニ・チョウヘリ”」
 飛鳥は吹き飛ばされて、近くの木に叩きつけられた。
 「ぐっ……」
 飛鳥は唇をかみ締めて、意識を保とうとした。
 「そろそろ、とどめとするかねぇ」
 今までとは比べ物にならない鈍痛が全身を襲い、飛鳥はあまりの痛さで意識が薄れていった。

 その頃、ことりは<お菓子の家>の外にいた。
 ことりは結界を破ろうとしているが、トゥルーデの結界は強力で破れなのでいる。
 「かなり強力な結界ね。早く結界をとかないと」
 ことりの背後に白色の転送用の魔法陣が現れた。すると、魔法陣からは1匹のヒッポグリフが現れた。
 ヒッポグリフは上半身は鷲で下半身は馬の姿。そして、肉食性である。
 このヒッポグリフの首には、七色に輝く首輪がつけられている。これは以前トゥルーデが作った、七色に輝く石と同じ素材で出来ている。
 徐々にヒッポグリフが迫る。
 「これは、かなり大変な事になりそうね」
 ことりは攻撃魔法よりも援護魔法を得意としている。そのかわりに、接近戦闘や格闘戦が苦手なのである。
 慌てることなくことりは、拘束系魔法「チカス・ルタシ」を唱えると、桜色の鎖が現われヒッポグリフを拘束した。
 「これで、ひとまず大丈夫かな」
 ことりは飛鳥が来てくれることを信じて、結界を破ることに専念した。
 すぐ背後では拘束されているヒッポグリフが暴れ、拘束を解こうとしている。
 ヒッポグリフを拘束している鎖の耐久度は魔力に比例し、鎖の耐久度を維持するには発動時は常時魔力を消費する。さらに結界を解こうとしているので、魔力の消費量は倍になっている。
 そして、魔力は消費すればするほど肉体・精神的に疲労をする。
 「飛鳥くんも頑張ってる。私も頑張らないと。飛鳥くん……」
 ことりは信頼する人、名前を呼ぶだけで安心する人の名をつぶやき、結界を破ることを専念した。

 意識を失いかけている飛鳥の脳裏にことりの姿がよぎった。
 いつもそばにいてくれる、誰よりも大切な人――。すると、しだいに意識を取りもどし始めていた。
 完全に意識を取りもどした飛鳥は起き上がった。
 「僕は負けられない。待っていてくれる人がいるんだぁー」
 トゥルーデに斬りかかった。
 「“ヴァヴェ・サークル”」
 しかし、トゥルーデは白色に輝く魔力の盾で、飛鳥の剣<ラクティス>を軽々と防いだ。
 飛鳥の剣<ラクティス>の魔力の刃が力強く輝き、トゥルーデの作った魔力の盾を破壊した。
 「なかなかやるねぇ。でも、こっちには人質がいるんだねぇ」
 「それはどうかしら。もう、あなたには人質はいないわ」
 ことりが援護に駆けつけた。大幅な魔力消費で大分疲労はしているのか、息が荒い。
 「結界が破れたから、拘束魔法にも集中できているし。形勢逆転ね」
 トゥルーデがヒッポグリフの方を見ると、完全に拘束され身動きが取れないで困り果てている。
 「ここは、撤退するしかないねぇ。“ヴェントウ”」
 されたトゥルーデは撤退の為に、転送用の魔法陣を出現させた。
 「次も、お前さん達が勝つとは、限らないからねぇ」
 トゥルーデは言葉を残すと、出現させた魔法陣に入っていった。
 お菓子の家は光となって消えさり、お菓子の家があった場所はただの林になった。
 結界を解くと同時にことりは催眠誘導系魔法でお客さん全員を眠らせたので、<お菓子の家>の外の出来事は見られてい。
 どうにか今回も『全て無かったこと』。都市伝説の様に真実を隠すことに成功した。
 その後すぐに飛鳥は、ヒッポグリフの七色に輝く首輪を壊して、ヒッポグリフをもとの世界に転送をした。
 飛鳥とことりは変身を解くと、美羽とフェイトのもとに向かった。


 『第13話 夢の粘土』につづく

Eternalえぼりゅ?しょん!! もくじ


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